土佐生物学会 2006年度例会
- 2006.11.25
【日時】
2006年11月25日(土)
【演題】
ソフィβ-グルカンの免疫賦活効果を利用した抗リーシュマニア症効果
【演者】
○高本美佐1,2・矢野弘子1,2・長瀧充1.2・スシジ=ウイックラマシンハ1,2・ララニ=ヤタワラ1,2・渡部嘉哉1,2・古谷正人3 ・吾妻美子4・吾妻健1
1高知大・医・環境保健学、2 (株)ソフィ・研究開発室、3総合研究センター・動物資源開発分野、4 高知学園短大・衛生技術
【目的】
ソフィβ-グルカンはAureobasidium pullulans が菌体外に産生する水溶性のβ-1,3-1,6-グルカンを主成分としている。β-1,3-1,6-グルカンは細胞性免疫誘導能を有し、抗アレルギー効果や抗腫瘍効果があることが報告されている。我々がこれまでに行ってきたソフィβ-グルカンを用いた研究でも、細胞性免疫系の活性化を示唆する結果が多数得られている。本大会ではソフィβ-グルカンの免疫賦活効果を利用して、Th1優位な状態で治癒することが知られているリーシュマニア感染症に対する予防および治療効果をマウスモデルを用いて検討した結果を報告する。
【方法・結果】
マウスに予めソフィβ-グルカンを2週間経口投与し、その後リーシュマニア原虫をマウスのフットパッドに感染させた。マウスはリーシュマニア原虫感染時に致死性を示すBALB/cマウスを用いた。その結果、ソフィβ-グルカンを投与することによって感染に伴う腫脹が有意に抑制された。なお、原虫培養液中にソフィβ-グルカンを添加して直接的な効果を検討した結果、原虫の増殖および細胞形態には全く影響を与えなかった。以上のことから抗リーシュマニア症効果は原虫に対する直接的な毒性ではなく、ソフィβ-グルカンによって誘導される宿主免疫系に由来することが示唆されたさらにこの反応に対するTLR4の関与を解析するために、TLR4に点変異が生じてリガンドに対して反応性を示さないC3H/HeJマウスとその遺伝的背景にあるC3H/HeNマウスに同様な感染実験を行ったところ、ソフィβ-グルカンを投与したC3H/HeNマウスの腫脹が感染後2週目より抑制された。この結果より、ソフィβ-グルカンによる免疫系の活性にはTLR4が一部関与していることを示唆している。