支部創立15周年記念 日本農芸化学中四国第46回講演会(支部大会)
- 2016.09.16
【日時】
2016年9月16日(金)
【演題】
β-1,3-1,6-グルカン生産性黒酵母の代謝産物が微生物の生育に与える影響
【演者】
井上 侑紀奈,齋藤 寛俊,河原崎 樹子,池上 裕倫1,村松 久司,永田 信治
(高知大・農、1(株)ソフィ)
【目的】
菌の代謝物が,宿主の生理活性を向上させたり,腸内細菌叢に働きかけたりすることが確認されている。黒酵母 Aurerobasidium pullulansのつくる代謝産物(SBG)は,菌体外多糖β-1,3-1,6-グルカンなどが主成分であり,ヒトに対する生理機能が多数報告されている。本研究では,SBGが微生物の生育に与える影響について検討した。
【方法】
被検菌として枯草菌 Bacillus subtilis,大腸菌 Escherichia coli,酵母Saccharomyces cerevisiae,乳酸菌 Lactobacillus plantarum No.18,L.reuteri KRN-12の5菌株を用いた。SBGをEtOHによって不溶性画分(F1),水溶性画分(F2),水溶性高分子画分(F3)に分画した。被検菌を混濁した生理食塩水に,これらのSBG標品を添加して、30℃または37℃,60min振とう後の生菌数を測定した。特に乳酸菌は、高濃度のグルコースやNaCl,EtOH共存下の増殖を検討すると共に,人工胃酸処理後の生菌数を測定した。
【結果】
枯草菌は,60 min 処理後の F2 画分と SBG 共存下の増殖試験で生菌数の減少が見られた。大腸菌では,60 min 処理後の SBG 標品で生菌数が減少したが,酵母も含めて増殖への影響は見られなかった。乳酸菌 L.plantarum,L.reuteri 共に,増殖時に SBG の影響は見られなかったが,高濃度のグルコースや NaCl共存下で,SBG 添加群の方がより増殖した。人工胃酸試験では SBG 添加により生菌数の減少が抑制された。乳酸菌を各 SBG 標品で 60 min 処理した時,生理食塩水に比べ F1,F2 添加群で多くの生菌数が確認された。以上の結果から,SBG は過酷な生育環境下でも乳酸菌の生菌数を維持することが示された。