第75回 日本寄生虫学会大会
- 2006.05.19
【日時】
2006年5月19日(金)
【演題】
黒酵母培養液β-グルカン経口投与による、犬回虫症のマウスモデルにおける肺病理組織学的検討
Immuno-pathological studies on experimental toxocariasis in mice by oral inoculation of β -glucan obtained from Aureobasibiumu pullulans.
【演者】
吾妻美子1 , Jayanthe Rajapakse 2, 高本美佐3 , 渡部嘉哉3 , 吾妻健4
(1高知学園短大・衛生技術科, 2ペラデニア大学獣医学部スリランカ, 3 (株)ソフィ研究開発室, 4高知大・医・環境保険)
Yoshiko Agatsuma , Jayanthe Rajapakse , Misa Takamoto , Yoshiya Watanabe , Takeshi Agatsuma (1Dept. Med. Tech., Kochi Gakuen College., 2Dept. Vet. Pathobiol., Fac. Vet. Med, Animal Sci., Univ. Peradeniya. SriLanka, 3Res. Develop. Divi., Sophy, Inc., Kochi, 4Dept. Env. Health Sci., Kochi Med. Sch., Kochi Univ., Kochi)
【目的・方法・結果】
本研究では、経口投与による黒酵母β-グルカン (β-グルカンと略す) の免疫賦活剤効果を検討するため、犬回虫をC57BL6とBALB/cの2系統の腹腔内に感染させ、コントロールマウス(水のみを投与)との肺組織像について病理組織学的に比較検討した。2系統に共通して、まず、好中球、好酸球の滲出が始まり、時間経過に伴いリンパ球、マクロファージへの変遷動態が観察された。この経過はβ-グルカン投与マウス2系統とも早い時期に見られ、また、炎症巣の形成も早く、 β-グルカン投与マウスでは、組織障害に対する修復が行われている。また、β-グルカン投与マウスでは、2系統ともマクロファージが活性化され、数が増加するとともに、大型化多核化したラングハンス型巨細胞が出現し始める時期が早い。さらに細胞質内にベルリン青染色陽性のヘモジデリンを有しているマクロファージ、多核巨細胞の集簇巣が認められ、活発に出血巣の赤血球を 貪食して、出血巣と組織の修復を行っている。また、BALB/cでは、リンパ球の出現が顕著で、気 管支粘膜下や胸膜下に多数の形質細胞の集団が認められた。この形質細胞の出現は、コントロール群の肺組織では認められなかった。このように、本実験により、β-グルカン投与マウスは、犬回虫感染による組織障害が少なく、さらに炎症細胞や免疫細胞が活性化され、より早く障害の修 復がなされることが明らかになった。