2006年度 日本農芸化学会中四国支部 創立5周年記念第16回講演会
- 2006.09.15
【日時】
2006年9月15日(金)
【演題】
凝集性を指標とする機能性多糖生産菌株の検索
【演者】
○寺尾啓吾1,宮脇香織1,2,浦川真由美1,2,加藤伸一郎3,永田信治1 ( 1高知大農・応用微生物,2ソフィ,3高知大総研セ・遺伝子)
【目的】
担子菌類や酵母の細胞壁を形成するβ-1,3-1,6-グルカンは、生活習慣病を予防する効能が期待されているが、抽出が非常に困難である。一方、プルランを菌体外で生産する黒酵母 Aureobasidium pullulansは、培養条件によって顕著なβ-1,3-1,6-グルカンを菌体外で生産し、培養液そのものが食品添加物として認可されている。これまでに黒酵母がβ-グルカンを生産する培養条件や細胞形態を検討したが、自然界から新しいβ-グルカン生産菌を単離して比較することも重要である。また、菌体外で生産されるβ-グルカンは強力な陰イオン高分子凝集剤である親水コロイドで、硫酸アルミニウムを添加すると瞬時に凝集する。本研究では、菌体外の全糖分析と凝集性を指標として機能性多糖生産菌の検索を試みた。
【方法・結果】
様々な土壌から固体培地上で粘質物を生じる菌体を分離した。分離株はいずれも黒色化し、顕微鏡で菌糸型と酵母型の細胞形態が観察された。これらの菌株を合成液体培地で培養すると顕著な粘性を生じた。培養上清に2倍容のエタノールを加えた沈殿物は、フェノール硫酸法で全糖量分析を行った。全糖量が多い菌株は約9g/Lで、最も少ない菌株は約1g/Lであった。また、硫酸アルミニウムで凝集性を示した菌株は、ある種の染色を行うことで顕微鏡下で細胞周辺に多糖層のリングが形成された。これはβ-グルカン生産菌の特徴と類似しており、β-グルカン様の多糖生産菌の選別を容易にする可能性が示唆された。