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2015 年度日本農芸化学会大会

【日時】

2015年3月28日(土)

 

【演題】

黒酵母β-グルカンの微生物と植物の生育に対する影響  

Influence on growth of a microbe and the plant of the black yeast β – glucan

 

【演者】

池上 裕倫1、河原崎 樹子2、齋藤 寛俊2、長瀧 充1、村松 久司2、永田 信治2

(1株式会社ソフィ、2高知大農)

Yasunori Ikeue1, mikiko Kawarazaki2, Hirotoshi Saitou2, Mitsuru Nagataki1, Hisashi Muramatsu2, Shinji Nagata2 (1Sophy Inc., 2Kochi Univ.)

 

【目的】

黒酵母が菌体外に生産する水溶性β-1,3-1,6-グルカン(SBG)は、食品添加物として認可されており、様々な食品に利用されている。SBG については、免疫賦活・血糖値改善・整腸作用など数多くの機能性評価の結果がすでに報告されており、健康食品、病院や介護分野での利用が活発化している。一方で、これまでの機能性の評価は、摂取したヒトや動物を対象とした研究に限られていた。そこで本研究では、加工食品への応用を目的し、SBG が微生物や植物にもたらす影響を検討した。

 

【方法】

SBG は、Aureobasidium pullulanns AFO-202 株を通気撹拌培養して得たβ-1,3-1,6-グルカン を含む培養液を使用した。SBG は、遠心分離とエタノール沈殿により不溶性画分(f1)、水溶性低分子 画分(f2)、水溶性多糖画分(f3)に分画し試験に用いた。試験菌株には、子犬の新鮮便より採取した Lactobacillus reuteri 6 菌株、ブンタンとユズの搾汁残渣、ヤーコンの破砕物から採取した L. plantarum 3 菌株の乳酸菌を用いた。SBG 存在下での乳酸菌の増殖を観察するため、MRS 液体培地で 37℃にて 2 日間静置培養した各菌株の前培養液を、終濃度が 0,5,10,20%になるよう SBG を添加した MRS 液 体培地中に植菌し、37℃で振とう培養して経時的に菌数と濁度を測定した。また、SBG を終濃度 0,5,10,20%になるよう添加した生理食塩水中で、各試験菌株を 37℃で 1 時間振とう培養した後、MRS 寒天培地に塗布して、37℃にて 4 日間嫌気培養した後コロニー数を測定した。生理食塩水の代わりに、 HCl で pH2.5 に調製した MRS 液体培地に 1.0%ペプシンを添加した培養液を用いて、37℃で 3 時間 または 5 時間振とう培養して、胃酸耐性試験を行った。同様に、MRS 液体培地に胆汁粉末を 0.3-1.0% 添加した後、37℃で 3 時間振とう培養して、胆汁耐性試験とした。各耐性試験には、SBG を終濃度 10%になるよう添加した試験群を作成し、コロニー数から算出する生存率を比較した。植物はカイワ レ大根の種子を用いて、SBG が発芽率と成長率に与える影響を観察した。種子 10 粒をシャーレに入れて、終濃度がそれぞれ 0,5,10,20%になるよう SBG を添加した蒸留水中で、蛍光灯を用いて 24 時間光を当てつつ、37℃で 5 日間水耕栽培した。

 

【結果】

SBG の添加により、ほとんどの菌株で濁度・菌数共に増加し、乳酸菌の増殖が促進されることが示唆された。また、SBG を添加することで、生理食塩水、胃酸、胆汁末中での生存率が改善された。試験菌株により、SBG に対する反応性は異なっており濃度依存的ではなかったが、SBG10%の 濃度で良好な結果が得られた。カイワレ大根も、SBG 存在下で発芽率、成長率ともに良好な結果が得られ、最適濃度は 5-10%であった。

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